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CHORD Hugo2とMojo レビュー

製品概要




並んでいるDAPはDP-X1Aです。iPhone8あたりに近いサイズ。







厚さは似たようなものだったり。






重ねてみるとHugo2の大きさがわかりますね。






Hugo2とMojoはイギリスのオーディオメーカーであるChord社から発売されたポータブルヘッドホンアンプです。



Mojoは実売5万円前後、Hugo2は実売25万円前後といったところでしょうか。

正規品でもタイミング次第ではMojoは4万円、Hugo2は20万円くらいで購入できたと思います。

ネットで検索してパッと目につく安い物は並行輸入品であることが多いです。もちろん正規品推奨です。




ポタアンとは言うものの、入力はデジタルのみ。どちらかと言えばDACですね。




Chordは据え置きオーディオにおいてはハイエンドメーカーで、自動車みたいな価格の製品も発売しています。


ポータブル製品でも価格は高いですが、ポタオデ界隈のハイエンドはバブル期のような有様なので、新製品を矢継ぎ早に投入してこないだけ良心的と言えるかもしれません。




現状ではMojoとHugo2の2機種が発売から少し年数は経つものの現行機であり、Hugo2向けの後付けユニットも今年(2020年)発売されました。







入力


デジタルのみです。


USB(microUSB)、3.5mm同軸、光接続は両機種で可能。Hugo2のみBluetoothも使えます。


これだけ接続方法があればほとんどの環境で問題なく使えるでしょう。


カタログスペックも高いので、再生できないほどの音源を持っている方はそうそういないと思われます。






出力


Mojoは3.5mmステレオミニが2つ。2つです。つまり2人で同時に音楽を聴くことができます!


……この仕様を有効活用できた人類は存在するのだろうか?(実は擬似バランス接続に使えるなんて話もありますが、やるなら自己責任で)


と思っていたら母親の配信ライブ視聴用に使った際に再生と録音を両立するために有効活用されました。奇跡。



Hugo2は3.5mmステレオミニ、6.3mmステレオ、RCAの3種類。RCA出力搭載のポータブル機器は珍しいです。据え置き使用も想定されているようですね。


この価格帯の製品としては珍しくバランス接続はできません。

バランス接続のメリットは主にクロストークやノイズの低減です。

Chord社はバランス接続のために複雑な構造にするよりもシンプルな回路の方が有利だという立場のようです。(据え置きではバランス出力も採用してるので、ケーブルの長さや電源を考慮して総合的にポータブル機には必要ないという意味だと思われ)


正直よくわからない領域の話ですが、実際に音がいいのでもうお前の言う通りでいいよという気持ちです。


個人的には良い音が聴きたいけれどバランス接続端子の覇権争いには関わりたくなかったので、シングルエンドで完結できるハイエンド製品はありがたかったです。むしろそこが購入の決め手のひとつですらありました。






音質について


FPGAとかWTAフィルターとかの理屈については省略します。


『Chordのいつものアレだろ?知ってるよ!』という方も多いでしょう。



実はHugo2にはフィルターの切り替え機能が搭載されていて、Mojoにかなり近い音を出すこともできます。予算と大きさを許せるならHugo2を買いましょう。


Hugo2はX-PHDというクロスフィード機能をオフでフィルターは白というスタンダードな設定で聴きました。


Mojoには音質切り替え系の機能はありません。



スペックはオタク心をくすぐりますが、問題は聴感上どうなのかです。

言うまでもないことですが、DACやアンプは環境の一部であり、音源やイヤホン、ヘッドホン等の影響もとても大きいです。

私はほぼアニソンしか聴かないし、イヤモニとか平面駆動ヘッドホンとか使っているので参考程度に留めておいてください。



Mojoは低音やアタック音に迫力がありますが、それらを中心に音楽全体がまとまっている感じがします。

そこが長所でもあり、もちろんそこらのスマホ直挿しなんかとは比べ物にならないくらいの水準ではあります。


しかしHugo2のボーカルの明瞭感を聴いてしまった後ではMojoは詰まっている音に聴こえてしまいます。音場感でもダイナミックレンジでもHugo2の方が広くて余裕があり、この点は兄弟機としての近さは全く感じず、エントリーとハイエンドの差が出ています。


逆に似ているのは分離の良さです。低音を土台に中域のメロディーを乗せて高音が綺麗に広がるという流れは両機種で感じました。


さらに微妙な音源でも良い感じに鳴らしてくれるのも共通ですが、これはビットレートや非可逆圧縮の問題に対しての話です。ひと昔前のロックとかで若干潰れたような音原だと可逆圧縮でも嫌な感じに耳をひっかいてくることがあります。そういう時はなぜかスマホの方がいい音だったり。オーディオわからん。



キックなどの瞬発的かつ低い音は好みが分かれそうです。Hugo2はMojoでは鳴らしきれていない音までキッチリと表現してくれますが、これはうるさいと感じる人もいるレベルになっていると思います。



(一応)ポータブルを想定するならMojoの方が向いています。Hugo2は音量を上げまくっても破綻せずに細部まで聴き取れるのですが、その繊細さが災いして環境音に邪魔されると気に障ります。Mojoは多少の邪魔が入っても自己主張してくれるので聴きやすいです。






携帯性について



Hugo2が入るポケットの服は少ないですね。仮に入ったとしても重いです。ポータブルには気合いが必要。



Mojoは単体では小さいですが、無線接続がなくDAPと重ねる必要がある上に音量ボタンの誤作動が怖いのでこれまた難しい。



『Mojo Poly』『Hugo2 2go』とそれぞれ単体プレイヤー化できるデバイスが発売されていますが、焼け石に水の予感。

DAP単体運用と併用するにはMicroSDが2枚必要になるのも痛いです。






使い勝手について




共通点


スマホなどを通信中に本体に近づけるとジリジリとノイズが乗ることがあります。DAPを重ねる際は注意。


バッテリーは公称通り連続再生7時間くらいだと思います。音質にこだわったバッテリー機器としては普通くらいかと。


バッテリー残量や音量などの情報を光るボタンの色で表示してくれるゲーミングDACなので慣れるまではわかりにくいです。慣れれば気になりません。


充電用と再生用でUSB端子が2つあるので充電しながらUSB入力ができます。


しばらく入力がなかった時は自動で電源を落としてくれます。親切。


音量はデジタルボリュームで、電源を落とした時の音量を記憶していて次回起動時にも音量が変わりません。

能率の異なる機器での事故が起こりやすい代わりに、いつも一定の音量で使うなら便利です。電源を落とす前にボリュームをゼロにする癖をつけおくと安心です。



出力インピーダンスが低いため、インピーダンスが低いイヤホンもつなぎやすい……とはいかず、鳴らせるけれど音量を制御しにくいという事態に。

特にHugo2を高感度イヤモニで使うならリモコンでボリュームを1段階ずつ上げていかないと急に爆音になりかねません。




Mojo


発熱が激しいです。あまりにも温度が上がると回路保護のため自動で電源が落ちます。夏場に充電しながら再生とかしなければそこまでは上がりません。



大きめの音量ボタンを押しっぱなしで音量が変わり続けるので、取り扱いを間違えると最大音量で誤爆する可能性があります。

その場合は高出力が裏目に出てイヤホンか耳がぶっ壊れます。



小さいのにゴム足つきで机上で滑りません。DAPと重ねる時にも役立ちますが、誤爆防止のため音量ボタン側をDAPと接触させてゴム足を無駄にするのがオススメです。



余計なボタンがないので機械音痴の人にも貸しやすいということも地味な長所。




Hugo2


持ち運ぼうとさえしなければ優秀です。


リモコン付きなので本体の光るボタンの意味を記憶する必要すらありません。このリモコンが便利で、ほぼ全ての操作が可能です。



音量ボタンはMojoとは違った問題を抱えています。

光る球体をくるくると回すことで音量を変えるというロマン仕様なので、微調整が難しかったりどっちに回すと音量が上がるのかわからなくなったりします。

最大音量での誤爆リスクは減りましたが普通に使いにくいのでリモコン推奨です。



発熱はしますが、Mojoに比べればかなり温度が抑えられています。



Bluetooth入力があるので気軽にYouTubeとか見るのにも使いやすかったりします。



半据え置きとして見た場合、バッテリー駆動なのでノイズ対策が基本的に不要で、店頭に持ち込めばほぼ自宅と同じ環境でヘッドホンの試聴が可能というあたりも地味な長所です。


充電し続けるとデスクトップモードになり常時電源オンで使用できます。

丸一日くらい必要なのと、結局スタンバイしてるだけの時間が長いので使ったことはないけれど人によっては役立つかもしれません。


デスクトップオーディオにおいては他の機器と電源の取り合いをしない上に邪魔な時は気軽に動かせるのも嬉しかったりします。



RCA出力で小型スピーカーを鳴らしてみたところ、それほどボリュームを上げなくても音量が取れました。

Hugo2で鳴らせないヘッドホンは恐らく存在しないと思われます。






まとめ

 

ハイエンドという言葉はコスパの対極にあるものです。Hugo2にMojoの5倍の価値があるかと聞かれたら「ない!」と断言します。



それでも聴いてみたら欲しくなっちゃった人だけが買うのがHugo2です。



Hugo2を購入してからすっかり出番の減ったMojoですが、むしろMojoでさえ「音はいいけど値段が……」という部類の製品だと思います。なにせ音が出るだけの機能なのにPS5とほぼ同じ価格です。


じゃあなんで両方買っちまったんだ?という話ですが、やっぱりお気に入りの音楽をいい音で聴くと幸せなんです。推しの声は特別なのです。



高額なので試聴必須なのはもちろんですが、正直音については一定の期間使ってみないとわからない面もあります。

騒がしい店内での短時間の試聴と自室でゆったりと聴いてみた時では印象は違います。

せめて使い勝手くらいは事前に考えられるように……ということで音以外の要素が多めのレビューでした。



とりあえず買って後悔はしてません。