MSA-380Sの感想、レビュー

今回の記事はVECLOSのMSA-380Sというアクティブスピーカーです。








VECLOSというブランド名に聞き覚えがなくても、THERMOSという社名はご存知でしょう。水筒とかタンブラーとか作ってる、あの会社です。
ここ数年、イヤホンやヘッドホン、スピーカーといったオーディオ製品も作っているようです。
というのはこの記事を書き始めた当初の話。なんと、サーモスがオーディオからの撤退を発表しました。という訳で供養として書き上げた次第です。



紛らわしいと思うので先に解説しますが、VECLOSから発売されたスピーカーは4種類あります。


1つ目はSSA-40。エントリーモデルで、価格も見た目も他と被らないので問題なく認識できます。1万円くらいで売られていて、在庫売り尽くしセールで2千円くらいが底値だったと思います。


2つ目はSPW-500WP。こちらは音楽よりも動画鑑賞向けです。これまた見た目は特徴的。価格は3万超ってところ。でしたが半額に。


ここからがちょっと戸惑います。
3つ目はMSA-380Sで、4つ目はSSB-380S。
このふたつは見た目がほぼ同じです。というのも、(恐らくですが)スピーカーユニットそのものは完全に同じ物を使用しているからです。
両者の差は入出力の仕様だけと思っていいでしょう。

MSA-380SはDTMなど、音楽制作目的の業務用モニタースピーカーとして開発されています。ぶっちゃけモニターだとか何だとかは名乗ったもん勝ちで、特に音がどうこうという訳ではありません。
アンプを搭載しているアクティブスピーカーで、DACは非搭載です。


一方で、SSB-380Sはコンシューマー向けです。
デジタル入力に特化していて、接続はBluetoothとUSBのみです。
ヘッドホンアンプ機能もあるので、1台でデスクトップオーディオ全般を担う製品です。


値段はMSA-380Sが約8万円で売られているようです。発売当初は倍くらいだったみたいなので、かなり落ちてます。今は更に落ちてるかも。
SSB-380Sはまだ発売からまだ1年半くらいなこともあり、約15万円……でしたが、売り尽くしセールで約6万円まで値下がりしました。


製品画像では区別しにくくなっているのでご注意ください。





音質について


私はスピーカーを買うのは初めてなので他の製品との比較はあまりできません。
MSA-380S自体はバランス接続仕様ですが、シングルエンドでも問題なく使えます。


音が前から聞こえます。ふざけている訳ではなく、テレビのスピーカーだとそこら辺で音が鳴っているという感覚なのに対して、MSA-380Sはハッキリとここから音が聞こえると認識できます。
T.M.RevolutionのSummer Blizzardのような激しい左右振りの曲が特にわかりやすかったです。イヤホンやヘッドホンでは音の動きを空気として捉えられないので、この曲の良さを引き出すには物理的な限界がありました。左右の動きがある中でもボーカルはぴったり真ん中に定位していて、ぼやけることがないです。

スピード感のある電子音はハキハキと鳴らしてくれるので、低域重視でない曲なら相性は良さそうです。
オーケストラやロックなど、迫力を求められるジャンルにはあまり適していません。ロックでも音が軽めならギターやスネアをうまく響かせてくれるので良いかもしれません。


周波数特性に極端な偏りはないと思います。モニターという文句の通り低音は控えめ。ですが低音は音量やセッティングで変わりやすい部分なので環境次第かと。
バスレフ型で後方が空いているタイプのスピーカーなので、壁との距離がかなり重要です。


高音は得意ですが、シンバルの響きなどは少し人工的な音になりがちです。
ボーカルは細かい表現までしっかり拾えるので、そこら辺の特性を踏まえてモニタースピーカーを謳っているんだと思います。





パッシブスピーカーとしての使用



MSA-380Sの特徴として、アクティブスピーカーではあるもののアンプとスピーカーユニットが完全に分離しているという点があります。土台部分にアンプが入っていて、そこからケーブルで上のスピーカーに接続する形式です。スピーカー端子はバナナプラグです。
つまり、本体のアンプを無視して他のアンプからケーブルを接続して鳴らすことが可能です。






パッシブスピーカーとしても使用できるということで、私はCHORD社のHugo2というポタアンを接続しています。
本来はラインケーブルとスピーカーケーブルは違うものですが、今回はスピーカーユニットが小型だし問題ないだろうという判断でRCA出力⇔バナナプラグのケーブルで鳴らしてます。こんな変な端子のケーブルはなかなか市販されていないですが、片側がRCAのケーブルを適当に用意して反対側を切り落としてオーディオテクニカあたりのバナナプラグを取り付ければ、はんだ付けもせずに自作(?)できます。


本体アンプだと電源を入れた時点で多少のノイズがありますが、Hugo2だとまったくノイズが聞こえません。
予想に反して音量もあっさり取れました。かなり近い距離で聴いているとはいえ、低能率で鳴らしにくいヘッドホンと大差ないボリュームで足ります。
音の傾向としては、基本フラットでかまぼこ要素もあるという印象です。オンキヨーのIE-C2みたいな全帯域を見通せるように調整された音の系統ではありつつ、低域を絞って高音も主張しないように抑えてあります。
モニターとは言っても音楽全体よりはボーカルに焦点を合わせた環境です。
音楽に包まれているような広い音場感とかはないです。定位は明瞭。このあたりの特性は本体アンプとHugo2でそれ程の差はないように感じました。
音の分離は優秀ではありますが、多人数ボーカルかつ音数が多い曲はヘッドホンに分があります。一方でボーカルの潰れにくさは手待ち環境の中では最高で、やはりボーカル中心のモニターが想定されていると思います。




最後に




もう新製品は来ないと考えると寂しいですが、VECLOSの製品はコストパフォーマンスで考えるとどれも微妙だったりするので、仕方がないですね。


私の場合は設置場所が限られているので、小音量のニアフィールドリスニングどころか至近距離で聴くような使い方をしています。量販店などで試聴すると、ほとんどのスピーカーが至近距離では違和感のある音になるので、大きな音が出せない狭小住宅でもオーディオがしたいという方にはピッタリです。低音の量感不足も音漏れを考えるならプラス要素。
逆に普通の条件が整えられるなら普通のスピーカーでいい……つまり、あまりにも需要が少ないところにしか刺さらない製品だった訳です。


今の暴落した価格でなら悪くない選択肢だと思います。
イヤホンやヘッドホンも大絶賛投げ売り中です。