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FitEar ROOMのリケーブルについて

そもそもリケーブルとは




イヤホンやヘッドホンにはケーブルを交換可能な製品があります。近年の高級機はほとんどそうです。

ケーブルが断線しても使い続けられるし、発売後に普及した物まで様々な接続端子に対応できるという地味に大切なメリットがあります。




しかしオーディオオタクとは何でも気にする生き物。

すべては『音はどうなの?』の一言に集約されていくのです。

今のオーディオ界隈にとってのリケーブルは、好きな音を追求するための手段として認識されている面が強いです。





リケーブルという言葉自体がスラングなので、人によって微妙に使い方が違います。ケーブルを交換するという行為を指す場合もあれば、交換用のケーブル自体をそう呼ぶこともあります。

こんなページにたどり着く方はネットスラングの曖昧さには慣れていることでしょう。細かいことは察してください。








試してみた




リケーブルを入手





FitEar ROOMというカスタムIEMを純正ケーブルで使っていましたが、今回はALO AUDIOのSXC24IEMというケーブルに換えました。

端子はステレオミニ。




正直なところ私はリケーブル懐疑派でした。確かに音は変わるんだろうけど、それ程大きな差にはならないだろうと。

そんな私がなぜリケーブルに踏み切ったかと言うと、某イヤホン専門店のセールで中古品が6000円になっていたからです。

『いや6000円って高くね?効果があるか疑ってる物にそんな金出すか?』と思ったそこの貴方。まだ間に合います。オーディオは程々に。





このケーブルは新品で約4万円で販売されていたようなので、実は6000円なら安い方だったりします。

FitEar2ピン端子のケーブルは少なく、新品で安い物を探したり自作したりしても似たような金額になってしまうという事情もあったりします。

MMCXや普通の2ピンなら選択肢があるのでもっと気軽に試せるはずです。






音について



全然違いました。



最もわかりやすい差は解像度で、本当に同じドライバーなのかと不思議になるくらいです。

ROOMは聴き疲れしにくい柔らかめな音ですが、シャキッとした傾向になりました。

中高域をやや抑えて低域に寄せたことで刺さりにくくなってはいますが、長時間使用なら純正ケーブルの方が適していると思います。



純正ケーブルは音源が中域に偏ると平べったくなることがあるので、音の立体感を常に高いレベルで要求するならSXC24IEMですね。



定位については純正ケーブルだと気にならないという感覚なのに対して、SXC24IEMは良いという感覚です。じゃあSXC24IEMの方がいい……とはいきません。

定位という概念は気にしだすとキリがないので綺麗に意識から外れるならその方が好ましいことも多々あります。

これも結局は音源次第。







取り回しについて


FitEar端子なだけあってコネクタ部分はある程度の強度がありそうです。

それでも頻繁に抜き差ししたくはないと感じるレベルでした。

ケーブル聴き比べはその場で交互に何往復も聴いてみるのではなく、一定期間ごとに交換するくらいに留めておきたいところです。




タッチノイズは純正とさして変わらず。ケーブルクリップとかで軽減する前提で作られているのだと思います。

純正ケーブルは癖が強くて使いにくかったですが、SXC24IEMだと多少は緩和されます。

どちらにしても一般的なケーブルよりは遥かに跳ねやすく扱いにくいです。本当にケーブルクリップは必需品。

幸いFitEarのケーブルクリップは優秀なので結果的には大した問題にはなりません。






結論




リケーブルは高級ケーブルなら変化は明確に感じられます。

ただし価格も含めて総合的に考えるならコスパは当然悪い。

あくまでも既に気に入った機種を持っている人がそこから先を目指して購入するものといったところ。

特にカスタムIEMはイヤーピースがないので安価に済む音質調整手段が少なく、耳にしっかりフィットするのでケーブルの取り回しが多少悪くても致命傷になりにくいので恩恵が大きいかもしれません。





私はHugo2ユーザーなのでステレオミニ端子のケーブルを用意しましたが、バランス接続をするために結果としてリケーブルの必要に迫られる場合の方が多数派でしょう。

ケーブルを何本か持っておくと、音の変化がバランス接続によるものなのかケーブルの差なのかを確認することができます。

今回は思っていたよりケーブルによる差が大きかったですが、当然音が近いケーブルもあるでしょうから聴いてみるしかありません。

最終的に本人が満足できる音ならそれでいいのがオーディオですが、そこに至るまでの試行錯誤も楽しいものです。






FitEar Roomの感想

移転してたけど、しれっと復活しました。






FitEar ROOMの概要


この製品は、ジャンルとしては『カスタムIEM』や『イヤモニ』と呼ばれるモノです。
ややこしいので当ブログでは『カスタムIEM』で統一します。ジャンル全体の特徴や注意点などは、後で詳しく説明します。


カスタムIEM業界においてFitEarというブランドは国内最大手とも言える存在です。公式サイトのクライアントリストを見れば、著名なアーティストがずらりと並んでいます。
そのFitEarが代理店を通さない直販限定モデルとして発売したのがRoomです。


お値段なんと49,800円!
耳型採取代、消費税、送料を入れても支払い総額6万円を切ります。
この価格は「高い!」と「安い!」で意見が真っ二つに分かれると思います。実際にはカスタムIEMの相場から考えれば安いはず。10万円超の猛者がそこら中に転がっている界隈なのです……。


つまり、FitEar Roomは安心感のある有名メーカーが限界までコストダウンして作った入門機という立ち位置な訳です。



そもそもカスタムIEMとは?


簡潔に書くと「耳型を採取して、それに合わせて作るオーダーメイドのイヤホン」といったところです。


人間の耳の形や大きさには個人差がある、ということはイメージできると思います。さらに同じ人の耳でも、左右で違いがあります。
試しに私のカスタムIEMを見ると、結構な左右差が出ています。



メリット

耳型に合わせて製作することで、グラついたりキツかったりすることがなく良好な装着感を得られます。
耳にぴったりフィットするので、遮音性が高いです。

デザインもある程度自由にオーダーできます。メーカーによって色選択くらいしかできなかったり、あれこれ飾りつけることができたりと様々です。文字通り自分だけのイヤホンを作れるということです。

プロのアーティストが使用する機材だったりもするので、好きな声優さんと同じモデルを買ったりできますね。それどころか公式からコラボモデルが出たりもしています。


デメリット


オーダーメイドということは、当然お値段も跳ね上がります。
同じ価格でもユニバーサルフィットの誰でも使えるイヤホンなら、買取に出した時にそれなりの額になります。しかしカスタムIEMの買取価格は雀の涙かもしれません。

加えて納期がかかります。FitEarやONKYOなどの国内メーカーは1ヶ月くらい、海外はメーカーによりますが、2ヶ月くらいはかかりそうです。
製品が耳に合わなかった場合は、メーカーにリフィットに出す必要があります。
メーカー毎に無料でリフィットできる期間が設定されているので、追加料金がかかることはそうそうないですが、何度も直すことになった方もいるようです。
海外メーカーで複数回リフィットになると、注文してから使用するまでに半年くらいかかってしまう可能性もなくはないです。

もうひとつリフィットが絡む話として、人の耳は変化するという問題があります。
購入してから何年も経つと耳に合わなくなってくる、なんてこともありえるそうです。
また、短期的に見ても、朝と夜、入浴、などの何かしらの変化で耳の大きさが変わったりもします。こちらは私の耳でも起こっている現象ですが、今のところ大きな問題にはなっていません。

試聴が難しいこともデメリットのひとつです。まず試聴できる店が少ない。試聴機は誰でも使えるように特別に作られたもので、ある程度は実機と音が変わってしまうようです。装着感に関しても、実際にどうなのかは手に入るまでわかりません。

起源やら何やら実用に影響しない詳しいことは割愛します。



音について


言うまでもないことですが、人によって音の感じ方は違うのであくまでも参考程度に。


環境はDAPがONKYOのDP-X1Aで、デジタル出力でCHORDのMojoに接続することもある、といったところです。
DP-X1Aはともかく、Mojoはちょっと特殊な音なので詳しい方はそのつもりで読んでください。

ケーブルは付属していたものをそのまま使ってます。
バランス接続には手を出してません。

極端な傾向はなく、リスニング向きの音です。
低音か高音で明確に聞きたい音がある人にとっては面白くない音かもしれません。
ジャンルはあまり選ばないですが、ボーカル曲想定で作られているような気がしました。
個人的には帯域バランスがRoomの最大の長所だと思います。
どの音も埋もれたり目立ちすぎたりしないようにちょうど良くなってます。
バランスが良いという特徴は困ったもので、それ以外に特に言えることがなくなってしまうんですよね。


解像度ではMH334、中高域の表現力や音の滑らかさではESTと、他のFitEar製品には届かない部分もあります。
価格差を考えれば健闘しているし、リラックスして聴きやすいのはRoomの方だと思うので、物足りなくなって上位機種へ……ということもないと思います。
物足りなくはないけど、それはそれとして他の機種も欲しくなるのはオーディオオタクの宿命です。


音場は狭くないです。なぜ狭くないなんて微妙な表現をするのかと言うと、あまり音場が気にならないからです。Roomという名前の通り、自然に聞けます。
音場が広いイヤホンはボーカルが遠く感じたりすることがありますが、Roomにはそれがないです。
ヘッドホンで発生しがちな耳元で鳴ってる感覚がなくて、完全に頭内定位です。



音以外の使用感、注意点


RoomはカスタムIEMの中でも特に感度が高いです。なので出力が高いアンプでなくても音量が取りやすいです。
しかし実際のところはノイズが入りやすかったり、アンプの出力が高すぎて音量のコントロールが難しかったりとデメリットの方が目立ちます。
対策としては、プレイヤー側でリプレイゲイン等の機能で音量を絞る、アッテネーターを使う、とかあります。

追記
iFi AudioのIEMatchという製品を使ってみたところ、ノイズと音量を抑えることに成功しました。中華製真空管アンプでもノイズがないです。



付属ケーブルはタッチノイズが大きく、取り回しも悪いです。でも私はリケーブルしてません。音は気に入っているし、座った状態でしか使わないので。


FitEar製品に共通することですが、本体のケーブル端子はFitEar2ピンと呼ばれる独自規格です。MMCXや一般的な2ピンと比べるとケーブルの入手性には難があります。
その代わりに、あらゆるイヤホン端子の中でも最高レベルの信頼性です。


FitEar製品共通のことがもう一点。デザインの自由度が低く、本体とフェイスプレートの色選択くらいしかできません。
機種による見た目の変化が少ないのでFitEar製品を複数購入する予定の方は、色や数文字だけ入れることができる刻印を利用して区別しやすくしましょう。

銀座にある須山補聴器でしか試聴もオーダーもできません。耳型を郵送できれば店舗に行けなくてもオーダーは可能らしいです。
イベントに出張した前例はありますが、次があるのかは不明。


装着感はとても良いです。Roomはミドルレッグシェルという構造で、他のカスタムIEMよりは耳の中に入る部分が短いので、圧迫感がないです。
本体は少し大きめで、耳を覆ってくれるので遮音性もあります。
ポータブル用途に限らず、ホームユースで窓を開けて使ったりしても細かい雑音が気になりません。
電車内ではさすがに聞こえにくくなりますが、無理に音量を上げずに使えます。
歩く時に使うのは危険だと思います。




まとめ


価格を抑えてカスタムIEMの良さを体感してもらうためのエントリーモデル、という立ち位置をしっかり実現できています。
丈夫な端子や遮音性、目立ったトラブルを耳にしないFitEarというブランドに対する信用、といった要素もあるので初心者的にはありがたいです。
最初の方に書きましたがもう一度『カスタムIEMは試聴機と実機で、ある程度は音が変わってしまう』なんてことがあるので、特に初心者はメーカー信用買いという面も避けられません。


須山の社長さんのツイッターを見ると、実はあまり利益が出ないらしいです。そして、沼への入口にするつもりがRoomで完結してしまうなんて話も……。
私もRoomが初めてのカスタムIEMですが、正直なところ他のカスタムIEMを買う必要は全くないと思っています。
ただ、それを言い出したらそもそも音楽なんて聴かなくても生きてはいける訳で。趣味としてカスタムIEMなんて代物に手を出す人種には終着点など存在しないのでは?


ここまで概ね好意的な意見を書いてきましたが、調べてみるとカスタムIEM関連でのトラブルはちょいちょい見つかりますし、普通の感覚では6万円って高いので、ユニバーサルフィットのイヤホンとかヘッドホンとか、色々と視野に入れつつ、自分に合ったオーディオ沼に沈みましょう。


追記
eイヤホンなどの販売店でも購入可能になり、値段は少し上がったようです。元が安すぎたのでやむなしかと。