7月18日。ついに!ついに!この時が来ました!INAIR M360着弾!
はじめに
今回は長文化への対策として、段落を独立させて、ほぼ順不同で並べました。要するに太字で中央寄せの見出しだけを読んでいって、気になったらその下の文章も読めばいいと思います。順番は気にせずどうぞ。最後のまとめから読むのもいいかもしれません。
使用期間が多少出てきたので追記
最初は音の硬さというか、リスニング向きではない雰囲気を感じました。が、気がつけば消えていました。しばらく使っているうちに耳が慣れたのか、あるいはこれがエイジングというやつなのか。
装着については最初は難しいかもしれません。慣れれば普通のイヤホンとほぼ変わらない速度でいつもの位置に着けられます。
全体的にハッキリとした音ですが、低音の解像度が特に高いです。T.M.Revolutionの「resonance」「crosswise」等がわかりやすい。ベースとか聴き分ける能力は低音重視モデルよりも高いのでは。
INAIR M360という製品について
超ざっくりいきます。ドライバー(音を出す装置)をスポンジで覆って耳に入れる、インイヤースピーカーと呼ばれるものです。音を出す→イヤーピースを通して耳に伝わる、というイヤホンの形式とは違います。ドライバーから出た音が直接耳の内部を伝わって聞こえます。
ちなみにオンキヨーのDAP、『DP-X1A』に直挿しで聴いた感想です。
脚色の少ない、乾いた音
乾いた音が何なのか、自分でもうまく説明できません……。とにかく飾り気がないというか、音源そのまま感がありますね。ギターとかは迫力があるけど、ちょっと疲れる音になることも。
低音の量は控え目
ほかのレビューでも言われてますね。空気感というか、ぼやけた量感はないです。DAPが違えば増えそうな気もします。量が少ないだけで輪郭のハッキリした低音がちゃんと鳴っているので個人的には好みです。恐らくこの製品で最も賛否が分かれるところ。
あまりにも聴こえなかったら後述の装着方法の問題かと。
解像度の高いハッキリとした音
ここも大きな特徴です。広く響く音ではありますが、きっちり鳴るって感じです。
ここは音源の影響も大きいです。特にキックがピシッと押さえられるか、ブワッと響くかは音源次第。
分離、聴き分け能力の高さ
ボーカル曲に合う特性です。オケが多少うるさい曲でも、ボーカルがしっかりと通って自然に聴けます。特定の音に意識を向けた時に、その音だけを聞き取りやすいです。
音場の広さ、定位
これを目当てに買う方も多いでしょう。そして感想記事的にはここが最難関です。まず伝えられることは開放型ヘッドホンとは何かが違うってことです。何が違うんでしょうねぇ……(語彙力の限界)
真面目に説明すると、開放型は耳元から少し離れた位置から音が聴こえていることを感じられますが、INAIRはそうでもないです。脳内定位ってやつでしょうか。でも確かに遠くに音があって、距離があるのがわかるんですよ。なのに距離によって音が減衰せずにスッと入ってくる。スピーカーとも違うような(良いスピーカーはこういう聴こえ方をするのかもしれませんが)。
定位はわかりやすいです。コンサートホールを意識した音源では楽器の位置がわかります。
定位はわかりやすいです。コンサートホールを意識した音源では楽器の位置がわかります。
こう書くとどれだけ変な音なんだって思われそうですが、慣れれば普通です。私も初めての試聴では意味がわからない音だと感じました。製品版を手にして数日、かなり慣れてきて自然に聴けています。逆に言うとこの要素だけに過度な期待を寄せるべきではなさそう。
装着方法
装着方法ってどういうことだ?と疑問に思うのは当然です。普通はイヤホンやヘッドホンなんて着けるだけです。せいぜいシュア掛けとかあるくらい。
ですがINAIRに関しては特殊な装着方法があり、ここを間違えると低音が消し飛びます。
説明書に書いてありますが、試聴時なども考えてここで伝えておきます。
簡単に言うと、ケーブルが繋がっている小さい本体部分を耳たぶの中に入れてしまうのがオススメということです。手順としては耳元にスポンジを押し付けてから、耳たぶを親指と人差し指で軽く引っ張りながら中指で本体を押して微調整するのが安定します。
音を出しながら良い感じに聴こえるところを探すのが大事。耳の形や大きさは個人差があるので、他人のやり方はあくまでも他人に合うというだけです。
私の場合は本体を耳たぶから出して少し下げて角度を上向きにしても同じような聴こえ方をします。こちらの方が手早いです。
装着感について
小さくて軽い製品で、スポンジが柔らかいです。着けた直後は『着けてるな』感がありますが、少し使っていれば着けていることを忘れるレベルです。
ハード面、ケーブル等について
思っていたより良かった、という点ではここが一番です。
プラグ周りはL字型で折り曲げ耐性高そうなゴツさ。ケーブルは左右の分岐までは布巻き。分岐点も強そう。リモコンはしっかりした操作感。強めに押してカチッと反応してくれます。iPhone7では動きましたが、DP-X1Aでは動きませんでした。Android6が対応外なのかボリュームを回して操作するタイプのDAPだからかはわかりません。
まとめ
特殊な品であることは理解しているつもりでしたが、改めて考えるとぶっ飛んだ存在ですね。音場以外の音質面においても個性が強いです。
最初は装着感が良いから誰にでも薦められる、なんて考えていました。使ってみると、そこらの流行りの高コスパイヤホンとは違う方向性の音で、これはオーディオオタク向きかなー、と認識が変わりました。
初心者に1万円する製品を薦めるなら、それ単体で全ての用途をカバーできないと厳しいです。INAIRは遮音性が高くなく、低音の量は少なく、高音は装飾が少なめでキラキラ感や華やかさは控え目です。音源や状況によって使い分ける選択肢のひとつとしては最高クラスで、1万円という価格も安く感じます。しかしINAIRのみでは不都合な場面もあるでしょう。
ただひとつ思うのは、流行りの方向に寄せて無難な音を目指していたら、ここまで面白い製品にはならなかったのではないか、ということです。
音が良いのは当たり前になりつつある今のポータブルオーディオ界隈において、INAIRはとても面白い、使ってみて楽しい製品という点で固有の価値があると思います。
以下、細かい点や今後の展望についてです。更なる長文化、具体例のジャンルの偏り等、お覚悟を。
タッチノイズ
完全に密閉された構造ではないので、頭の中を覆いつくすようなガンガンとした音を食らうことはありません。外で歩くならともかく、室内で使う分にはケーブルクリップも使う必要はなさそう。
音楽を聴いていても似たような傾向があります。アイマス曲で言うと『サイキック!ぱーりーないと☆』とか『Take me☆Take you 』の最初の部分は、頭の中全体にガッと来るような強めの音です。INAIRで聴くと空気感がなく、音として聴くことができます。迫力には欠けますが、耳に優しい。
空気感、という面では低音でも特徴的です。『名前のない怪物』のような、再生環境によっては低音の響きで空気感が作り出される曲でも、輪郭のハッキリとした音を保っています。
音源との相性
ロック系では、阿部真央さんの『這い上がれ MY WAY』では、ビシッとしたボーカル、響きが抑えられたドラム、主張しすぎないものの存在感は強めのギターといった印象。ボーカルの通りの良さがメッセージ性の強めな歌詞と相性抜群。音数を増やしすぎない曲なので、それぞれの音の響きも全体の明るくかっこいい雰囲気も楽しめます。
『戦車道行進曲!パンツァーフォー!』の最初のドラムロールはCD版とハイレゾ版で情報量の差が出るところですが、手持ちの環境ではINAIRが最も大きい差でした。解像度の高さ、原音の影響を強く受ける傾向はハイレゾ向きとも言えるかも。
しかしガルパンのサントラとの相性は微妙なところです(特に劇場版)。低音と空気感の少なさと、ホールのような空間をイメージした音源は一長一短の組み合わせ。定位はしっかりしているので、どの楽器がどこにいるのかは非常に掴みやすいです。このあたりからもフラットで音を伝えることに注力したINAIRと、心地良く聴こえる音を出そうとする他の製品の方向性の違いが感じられます。
ChouChoの『カワルミライ』は相性が良い曲です。引っかかる感じがない綺麗な歌声が他の音に邪魔されずに届きます。もちろんオケも明るく鳴っていて、独特の音場や音域特性をフル活用できます。
個々の音源次第なのは前提として、大雑把にではありますが曲の相性の法則性が見えてきました。
まずバンド系の重なる音の数が少ない曲は有利です。これは個別の楽器の音と全体での雰囲気を両立しやすいからだと思われます。
女性ボーカル、オケも高めの音が多い曲も有利。これは純粋に音域特性に合っているから。ただしキラキラ感はあまりないので、寂しい音に聴こえる可能性も。
苦手なのは重低音寄りの曲とかかな?
アイマス曲も楽しめます。特にハイレゾ版は。『CHANGE!!!!』ではクラップ音と他の音でうまくバランスが取れて特別聴きやすくなってます。『Do-Dai』は声と他の音の両立性能が活きているだけでは終わらず、複数人ボーカルのひとりひとりの声の魅力をしっかり出してくれます。『Romantic Now』の瞬間的な音の盛り上がりのリズムの中でもみりあちゃんボイスを堪能できます。『Star!!』はアイマス曲でも屈指のダイナミクス活用曲ですが、音のピークでも痛みや苦しさがまったくないです。INAIRは音量大きめ推奨のアイマスハイレゾには良き相棒でしょう。
相性の良い曲を探せるのはオーディオ沼の住民的には利点ですよね。一般的には面倒なのかもですが。
楽しみ方
高額なヘッドホンに手を出した時、この曲はこんな音があったのかと気がつくことがありました。INAIRでは、この音はこう聴こえることもあるのかと驚くことがあります。特にユーロビート系統の曲でそれが強いです。不思議なことに特定の方向性に向かうわけではありません。広く、長く響くこともあれば、スッと音が抜けることもあります。そんな音を見つける楽しみもある、という話です。
DAP、音の上流について
DP-X1Aに直挿しで聴いています。以前使っていたソニーのウォークマンAシリーズの方が低音重視だったので、そっちの方がリスニング向きになるかもですね。
ポタフェスで試聴した時は鳴らしにくいと感じましたが、静かな環境ではそうでもないです。ローゲインでも普通に鳴らせます。
イコライザーでの調整は微妙でした。というか輪郭がハッキリする傾向が強すぎて、これで低音が強いと音楽としてのバランスが悪く聴こえてしまいます。
アップサンプリングは良いです。音が丸くなります。原音や聞き取りやすさから聴き心地の良さに寄る感じ。
音楽再生以外の使用
ゲーム、映画などにも向いているのでは……と思いましたが、ここは音楽以上にシビアなところでした。
World of Tanks Blitzという、名前の通り戦車で戦うスマホゲームで試してみると、あまり今までと変わりませんでした。理由は明白です。戦闘中に音なんて聴いてない!この手のゲームは考えることが多くて、音なんて必要だと思った時に一瞬意識に入れるくらいです。加えて言うなら、原音に忠実な印象のINAIRでは、ゲームの音そのものがあまり良くなければ迫力も出ないという問題もあります。
通話しながら協力プレイをするのには向いています。密閉型と違って自然に声を出せますし、相手の声も聞き取りやすいです。
通話しながら協力プレイをするのには向いています。密閉型と違って自然に声を出せますし、相手の声も聞き取りやすいです。
音ゲーをやってみると臨場感が増します。アイドルマスターミリオンライブシアターデイズ(通称ミリシタ)はライブ演出を楽しんでアイドルと触れ合うゲームで、難易度の高い譜面に挑ませてくる傾向ではないので相性が良いです。
非常に良かったのがニンテンドースイッチのゼルダの伝説ブレスオブザワイルド。このゲームはオープンワールドならぬオープンエアーを名乗る程の没入感が売りですが、その方針とINAIRの音がバッチリ合います。鳥のさえずり、足音、戦闘時の金属を打ちつける音など、全ての音が自分の周囲に広がっているようで、ゼルダの世界に入り込めます。敵の位置や仕掛けが発動した時の効果音の定位も掴みやすく、純粋にプレイしやすくなるという面もありました。
RPGアプリのFate/Grand Orderをプレイした時は特に何も感じませんでした。定位も分離もあまり影響しないことは予想通りです。
ゲームは本当に音源の質と相性の問題だと実感。
動画視聴でも音源次第だという印象は変わりませんでした。VRとの組み合わせは興味がありますが、ちょっと予算が厳しい。
遮音性について
低いです。元から高くするつもりはない設計ですから。現在進行形で普通の音量で聴きながらドア開けっ放しの隣室の会話内容を聞き取れています。酔っ払いなので声大きめですが。
装着感について
『着けていて嫌な感じがしない』ではなく『着けている感じがしない』感覚は初めてです。
自分でベストポジションを探せることで様々な人の耳に合うとも取れるし、人によって受け取れる音に差が出ているとも取れますね。
慣れれば簡単にいつものポジションに入れられますが、初日はちょっと戸惑います。
ちゃんと聴きたい場面ではなくて、でもスピーカーは使えない……という時に耳元に置くくらいの使い方ができるのは地味に便利。
今までとは全く違うことをするので、無理すると耳の変な所が痛くなったりします。
問題点としては、左右で差が出てしまいやすいということがあります。私の場合はどうしても右側がよく聞こえて、左側が薄くなる傾向があります。人間の耳も完全に左右対称ではないでしょう。eイヤのだいせんせいもブログのカスタムIEMの記事で左右の耳の大きさが違って苦労していると語っていました。INAIRのような耳に自然に合わせてくれる製品では、装着できるからこそ聞こえ方に差が出てしまいます。もちろん同じ聞こえ方をするように、左右で違う着け方をするというINAIRならではの対抗策は有効です。このあたりは長所と短所が同時に発生している感じですね。
後継機について
実は公式情報で既に次の製品について言及されています。製品仕様の欄にも有線、無線の他にトゥルーワイヤレスと思わしき存在があります。
今のところは更なる高音質とリケーブル対応、リモコンなしのケーブル、といった要素が意見として目立つようです。
個人的には、有線と無線だけでなく音の傾向やケーブルの仕様などで複数のモデルを発売してほしいところです。ポタフェスで様々な製品を試聴してみて、1万円を切る価格帯でもすごく音が良かったんですよ。もう音が良いのはスタート地点で、そこから他の理由で買うものが決まっていくのではないかと思います。INAIRはせっかく強烈な個性を持っているので、無理にひとつの製品にまとめようとして無難な仕上がりになってしまうのはもったいないです。値段という問題もエントリーモデルとハイエンドモデルに分かれていた方が有利でしょうし。
リケーブル対応については、断線対策にはなるものの結局は端子部分が破損しやすいことには変わりなく、このサイズの製品にはマイナスになりかねないという懸念があります。でもケーブルで音の変化を楽しむことは楽しそうですよね。いくらでも金がかかりそうなので手を出したくはないです。
装着感については、微調整できることがメリットであると同時にデメリットにもなっているのが現状。左右で音に差が出てしまうことや、安定して同じ音を聴くのにコツが必要なことが、今後どうなるでしょうか。
今回はいい買い物をさせてもらったので後継機が来たら問答無用で買うと思います。
まとめ
今までの怪文書を全部読んでここまでたどり着く方はいるのだろうか。
要するに個性が強くて私は好きだけど、人によっては気に入らない部分もあるだろうってことです。
他のイヤホン、ヘッドホンとは異なる体験ができるので、既に何本も持っている人にこそオススメですね。