オーディオ沼に足を踏み入れてから早数年。
自分の環境に満足しつつも新しい刺激が欲しくなってきました。
そんな時に思い出してしまったのです。
いつかのヘッドフォン祭で聴いた静電型イヤースピーカーの音を。
入手経路と価格
STAXなんて高嶺の花。と思ったけど約20万のHugo2を買っておいて今更何をって話ですね。
散々迷った挙句、無試聴で購入することにしました。基本的に試聴はするべきだと思いますが、新型コロナ的に東京行くの躊躇われるし、この手の遮音性が低い製品は店舗で試聴しても周りがうるさくて音量上げて過剰に聴こえるのが常です。
フジヤエービックで、アウトレットのSRM-006tSが64,800円と中古のSR-L500 mk2が57,900円。
これに加えてステレオミニとRCAをつなげるケーブルをエレコムで、安物だけどノイズフィルターはついてる電源タップをヤザワで用意し、合計12万円台に収まりました。
残業0時間だった場合の私の手取り月給に近づきつつありますが、STAXと考えれば安く済んだ方だと思います。
概要
SR-L500 mk2は、現行機種の中では真ん中くらいのモデルです。mk2という名の通り無印のL500の改良版です。
リケーブル可能になったり、装着感向上のために発音ユニットとヘッドバンドの間がアルミ製の新形状になったりしてます。
今回は中古購入でしたが、運良くキズもなくエージング済みくらいの感覚で使ってます。
SRM-006tSは、真空管ドライバー(アンプ)のエントリークラスといった立ち位置です。今となっては一世代前のモデルですが、STAXはモデルチェンジで音が大きく変わることもなさそうだし信頼性も高そうなので、気にしなくていいと思います。
今回はB級品とのことで、キズは有りますが見た目だけの問題でしょう。
STAXのイヤースピーカーは通常のヘッドホンアンプでは鳴らせません。スピーカー用のアンプでも無理です。
パワー不足とかではなく、根本的に発音するための仕組みが違っているのです。
つまりSTAX製品はほぼセット購入前提の上に他の環境に流用できません。
私は据え置き環境をほとんど持っていなかったので気になりませんでしたが、人によってはハードルが高いかもしれないです。
社外品のアンプやら何やらは存在しますが、自己責任ルートです。
音について
真空管とトランジスタの違い、電源の差、その他諸々で音は変わります。あくまでも私の今の環境ではこうなった、というだけの話です。
DACはHugo2です。
手持ちのDP-X1Aも試しましたが、低音再生能力と音場が全然違ったのであまり使っていません。
駆動方式が違うだけあって、他のヘッドホンとはかなり毛色が違います。
開放型ヘッドホンも平面駆動型ヘッドホン(ダイナミックドライバーの一種)も持っていますが、独特な音だと感じました。
解像度が高いというよりは音が明瞭という感覚です。
薄い振動板のおかげか、耳元で音が鳴っている感覚はしないのでヘッドホン苦手派の人でも試聴の価値はあるかもしれません。しかしそんな人はこの記事を読みません。無念。
静電型は低音再生が苦手という評価を散々目にしましたが、低音の量感は標準的なラインだと思います。もちろんドンシャリヘッドホンと比べたら少ないです。あくまでもマニア向けの「フラット」という単語が80%くらいの確率でレビューに入っている世界での標準。
先述の明瞭感の恩恵でベースの音は追いやすいですが、低音の分離は音楽としてのまとまりを失いやすい諸刃の剣。
低音に限らず曲によっては特定の音が浮いてしまうことがあります。
分離感の他にも高音が滑らかでギラついてないという特性もあり、音が少ない曲を大きすぎない音量でゆったり聴くというシチュエーションを想定して音作りをしているのかもしれないと感じました。
静電型ドライバーをツィーターにしたイヤホンは試聴したことがありますが、その時に感じた滑らかさとはまた違った印象でした。
音の一部が丸いのではなく、出てくる音全体で荒っぽさがないのです。
ヘッドホンでいえばプリンことHD598がそうですが、耳当たりの良い丸い音は解像度が犠牲になるのが普通です。
STAXは丸さと繊細さを両立しているという点で他のヘッドホンとは一線を画しています。
それがどういう結果を招くかというと、音量を上げがちになります。
ほとんどの方は同じ音質なら音量が大きい方が『いい音』と捉えてしまう傾向があります。
もちろん静電型イヤースピーカーなんて代物を本当に買ってしまう輩はそこら辺考えながら聴くとは思いますが、長期的には耳のことを考えたら音量はある程度に抑えるべきなので自制心が求められる製品でもあります。
ただし、音量を上げやすいという特徴はHugo2にも共通する要素なので上流との相性で特別私の環境がそうなっただけの可能性もあります。
同じくらいの実力のDACは残念ながら手元にありません。
音が刺さりにくいのはイヤースピーカー側の特性として確かだと思われます。
使用感
いくら静電型が特殊とはいえ、基本的には他のヘッドホンと同じです。
専用アンプも電源を入れたら入力を選択して音量を上げるだけの簡単操作です。
真空管アンプだからか起動には10秒くらいかかるし、その後も暖機運転をした方が音がいい気がします。
ポータブルオーディオの感覚でサクサク使える代物ではないです。
装着感は見た目から想像していたよりは良いくらい。側圧弱めなのでヘドバンでもしない限りは問題ないでしょう。
地味にイヤーパッドが傾斜しているので意外と頭にフィットします。
ヘッドバンドの長さは調整可能です。どのあたりが適切なのかわかりにくいですが。
注意点としては振動板が湿気に弱いことが挙げられます。
お風呂上がりの使用はNGです。
あからさまに防御力が低いので総じて取り扱いに気をつけましょう。
まとめ
静電型という個性はとても楽しいですが、これ1本でゲームも動画も全てこなすのは難しいです。
音の相性が出やすいのもありますが、取り回しが悪いので基本的にはじっとして動かない時に使うものです。
ベッドでゴロゴロしながら使うには不便かも。
見た目も虫カゴなので、人を選ぶ機種と言えます。
矢継ぎ早に最新機種が投入されるポータブルオーディオの世界に疲れたら、こういう環境でゆったり過ごすのも悪くないと思います。
引き返せないタイプの沼の気配も濃厚ですが、それもまたいいんじゃないでしょうか。